14MHz用6エレメント八木アンテナの設置と故障修理の記録 Omnibus Contest Club JA1YPA

建設計画

<経緯>

クリエート社のフルサイズ CL-20DX 5エレが長年の使用にも耐え順調に稼動していたが、どうも飛びが悪くなったのでは?ということで、ハイゲイン製の204改造205と交換した。そのハイゲイン205も2008年の春一番で敢え無く4エエレメントの姿になってしまい、クリエイトのCL-20DXの再登場となった。しかし、FDPさんから一旦リタイヤさせたアンテナじゃ面白くないなぁ・・・。との声もあり、性能向上を図ったうえで再使用することになった。

 

<性能向上と強度の確保>

性能向上の手段にはエレメント増やすことが手っ取り早そうなので、これまでの5エレを6エレに改造することにした。最も面倒なのはブーム強度の問題であるが、強度を計算する知識もないので、既成のアンテナ構造から推測してとにかくやってみることになった。5エレメント用のブーム材料が3本分あったので、太くて強そうな中央部分だけを使い、中央部分は一回り太い70ミリのパイプで2重化した。アルミパイプは上野の天野アルミ店から購入した。エレメントは解体保管材料の中から同じクリエイトのものがあったので流用した。ブームの長さは約16mとなり、重量はエレメント追加分よりかなり重くなったが、何とか使いものになりそうなものが出来上がった。

             
             
【記:JA1PEJ/中村】

.コンピュータ設計

<設計作業手順>

パソコンの設計のソフトは定番MMANAで設計した。MMANAはJE3HHT 森氏が作成したもので、米国政府研究機関で開発された[MININEC Ver3]を元に作成したモーメント法によるアンテナ解析ソフトをC++に移植したものだ。Mmana( http://plaza27.mbn.or.jp/~je3hht/mmana/index.html )の詳しい使い方については、MMANAのホームページを参照して頂きたい。

 

アンテナ改造に伴い下記のようなシミュレーションをした。

記号

エレメントに使うアルミパイプのサイズデーターの入力。 MMAMNAを起動すると「アンテナ定義」、「アンテナ形状」、「計算」、「パターン」というタグのついた画面が現れるの で、エクセルへのデーター入力のような感じで、エレメントデータと  エレメントの属性データーを入力。

記号

データは「新規」行の「X1(m)」列から右に、「Y1」、「Z1」、「X2」、「Y2」、「Z2」、「R(mm)」、「Seg」と並びます。通常、Xはエレメント間隔、Yはエレメント長さ、Zは高さを入れる。「R(mm)」はエレメントの半径、「Seg」は八木の場合0(ゼロ)となる。

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XからZにおける、*1は始点、*2は終点で、*2には-(マイナス符号)を付けて入力。Rはエレメントの太さを半径値で入力するが、通常HFの八木アンテナの場合では、太さの違うパイプを組み合わせて使用するので、ここは-1.0を入力し、別の表でエレメントの構造を細かく設定する。

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Zはエレメントが同一平面に並ぶ事になるので、八木の場合はZ1、Z2とも0となる。今回のエレメントの入力データー(最適化結果値)はアンテナ寸法表に記す)

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その他の入力部分は、「DM1」が400、「DM2」が40、「SC」が2.0、「EC」が1、周波数は14.175で設計した。「Name」は自分の好きなものでOK。

記号

次に、「編集」タグをクリックし、「組み合わせワイヤー」を選ぶと、「ワイヤー組み合わせデーター」表が現れるので、ここでエレメントを-1.0に該当するエレメントの各パイプの太さと長さを入力。

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エレメント寸法の入力は、「R(mm)」に、-1.0を入力すると、デフォルトデータが入力される。エレメントの寸法は中央部分から、「L0(m)」、「R0(mm)」、「L1(m)」、「R1(mm)」と順番に入力します。今回使用したエレメントは4段階にテーパーされているので、4列分のデーターを入力することになるが、4段目に当たる一番先端のエレメント寸法の「L3(m)」は、プログラムによる最適化処理で長さを変動させるので、99999.9を入力する。(「Type」の⇔*を変える場合には右ダブルクリックで参照ができる。)

記号

「組み合わせデーター表」を閉じて、「アンテナ形状」タグを選択すると、テーパーリングデーターによるエレメント配列の構造が確認できる。データーの入力が済んだら、「計算」タグを選択し、Freqで設計周波数を設定し、「計算ボタン」をクリックすると、アンテナの性能が計算され、入力したエレメントデーターにおける、設計周波数でのアンテナ性能が確認できる。「パターン」タグを選ぶと、水平と垂直のビームパターンの確認も出来る。

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そのほかエレメント材質も選択できる。

記号

最適化は、決めたエレメントの寸法、ブーム長よりボタン一つで最適の状況の計算する。このソフトの設計の最終的な要点は最適化の画面で、マウスでゲイン、SWR、FBなどを最大に設定して最適化を計算すると最適の寸法値が計算される。。ブームを長くしてもあまりゲインは変わりません。0.2~0.3db(電力比で約1.047-1.071 倍)程度です。SWRとFB比、ゲインとの兼ね合いで、ロングブームだと全てがフラットな特性となりやすい。

記号

一度計算処理を行うと、その結果を元に給電点のインピーダンスやSWR 特性、ゲイン、FB比などのデーターがグラフ上で確認できる。

記号

「計算」画面で、「周波数特性ボタン」を押すと、「Z」、「SWR」、「ゲイン/FB」、「パターン」のグラフが選択できる。グラフの表示状態も「プロパティ」で変えられる。グラフは「推測」「詳細」「全点」など表示レベルが選択できる。

記号

 今回のアンテナ寸法表

                                                           (単位:メートル)

エレメント 長さ 間隔
反射器 11.15   0.0
放射器 10.58  2.98
第一導波器 10.48 5.23

第二導波器

10.13 9.38

第三導波器

9.41  11.7

第四導波器

9.77  16.16

 

<シミュレーション>

シミュレーションではゲイン最大を目指したが、SWR特性が悪いと他に及ぼす影響も大きいので、全体的に安定して使用できる様、マッチングにも配慮した。これまでのアンテナがどうも飛ばない、と言われていたので、「飛びがこれまでと一味違うぞ!」ということと、丈夫でしかもSWRが十分調整され、フルパワーにおいても、「安心して使えるアンテナ」と言うことに重点をおいて設計した。特に、エレメント配列については、ブーム延長のために追加したパイプ寸法が70㎜のため、既製のエレメントクランプが使えないので、この部分にはエレメントを付けないようなエレメント配列にした。マッチングセクションは現用のスタブがそのまま使えるように、給電点のインピーダンスは元設計の値を聞いてその値Z=35-j23(Ω)として最適化を行った。  

             
             
【記:JA1PEJ/中村】

アンテナ構造や材料など】

<エレメント>

クリエイトデザインのCL-20DXから流用した。

ラジエータエレメンの給電部は塩ビパイプに割りを入れたもので絶縁してあるが、焼損してSWRが無限大になったので交換した。在庫しているジャンクアンテナから交換部品を探したところ、最近のバージョンでは絶縁物が成型品でエレメントをすっぽりと包み込む形に改良されている。これならば雨水による絶縁低下が防げるのではないだろうかと思う。

 

<ブームの延長>

CL-20DX用ブームの太い部分だけを2本分使 ったが、長さが足りないので中央部分を70mmの市販のアルミパイプで延長した。

 

<ブームステー>

ステーには以前から使っていた5ミリのデベロープを使った。長さの関係でブームの途中から吊ってあり、アンテナの前後で重さが違うので前方の方が少し長くなっている。当初は余計な金具は錆びたりして良くないのでターンバックルを使わなかったが、前後のバランスが取りにくいのでターバックルを使って調整することになった。

 

<フロートバラン>

W2AUバランを使っていたが、端子のネジの部分が接触不良になり、コアーを使ったフロートバランを自作して交換した。

 

<セパレータ>

給電部が焼けたので比較的新しいタイプのアンテナから外して交換した。壊れた状況から原因を推測してみに、古いタイプのセパレーターにはスリットが切ってあり、このスリットに雨水が溜まるとUボルトとの間でスパークしやすくなるのでは無いかと思う。因みに新しいタイプのものは、エレメントをすっぽり包み込むような成型型になっていて絶縁性が改善されているらしい。

 

             
エレメント寸法 設置状態 フロートバラン   給電部ケーブル(バラン) 同軸ケーブル バランの様子
【記:JA1PEJ/中村】

アンテナの製作・組立】

 

<エレメントの組立て>

メーカー製なので特に無し。

 

<ブームの接続>

接続部分は内側と外側に補助パイプを入れてつないだ。

 

<フロートバラン>

当初は既製品のW2AUバランを使っていたが、接続ネジの部分が接触不良になったので自作したものに取り替えた。自作品は20D-2V同軸ケーブルにトロイダルコアーのFT140-#43を10個通し、同軸ケーブルに撚りIV線を 巻きつけて半田付けし直接エレメントにつないだ。コアーの部分を塩ビパイプでカバーしているが水は入ると思うので水抜き穴をあけておいた。

前回7メガ用を作ったときにはFT-114#43コアーを使ったが、今回はFT-140#43を使うことにした。140は20D-2Vが外皮ごと通せるのでテーピングがやりやすい。ブームに縛り付けて置くので燕尾パイプは少し大きめのサイズを使った。同軸ケーブルの長さは10m位にしたが少し長すぎて邪魔になるようだ。

 

<仮組立でSWRチェック>

ームとエレメントが完成した段階で、タワーの低い部分に仮設置してSWRのチェックを行った。コンピューター設計の初挑戦でもSWRも設計値通り、1.1に近い値がでて居り、MMANAのすばらしさに感心した。

 

<組立>

最終的な組立てはタワーに載せるときにタワーの上で行った

 
エレメント組立テスト 給電部の接続 ブームの組立て ブームの完成 リベット打ち補強 給電ケーブル(バラン) 給電部ケーブル
【記:JA1PEJ/中村】

【アンテナの工事】

<設置工事>

地上でアンテナを組み立て、モーターウインチでそのまま上げようとしたが、6エレの大きさではタワーのまわりに立ち木に引っかかってしまいそうなので 、タワーの上で組み立てることにした。タワーに沿ってブームを立ち上げ、エレメントを1本ずつ取り付けた。心配していたエレメントの水平調整も真っ直ぐきれいに揃えることが出来た。エレメントが取り付いたアンテナを周囲の木の枝が当らない高さまで持ち上げてから水平に戻し、そのままタワートップまで吊上げてマストに固定した。

 

<エレメント先端の交換>

傍に建っている3.5メガ用バーチカルアンテナのステーが切れて、大きくしなっているのをそのまま放っておいたら、14メガのリフレクターに当ったらしく、先端が曲がってしまったので修復工事を行った。片方のリフレクターの先端を外して交換するだけなので、地面まで下ろさずタワーの上で交換した。ウインチでブームを吊上げ、マストクランプを外したあと、エレメントを垂直方向にねじり、ブームにロープを掛けてタワーに引き寄せて、エレメントの先端に手が届くような形に仮固定してエレメントを交換した。

 

<エレメントセパレータ交換>

給電部のセパレーターが焼損したので交換したが、ネジが錆びていて回らず予想以上に厄介な工事になった。アンテナを地面まで下ろすには周囲の木が邪魔になるので、タワーの上でアンテナを傾けてエレメントを外して行った。これまではエレメントクランプごと外していたが、今回はエレメントクランプを外す必要があるが、古いアンテナなのでエレメントクランプのネジが錆び付いて外れず大変な作業になった。今後エレメント外す必要があるような工事ではボルトカッターを準備して置いた方が良さそうだ。

 

<バラン交換工事>

アンテナを中央で1本吊りして一旦垂直にねじってから、ブームにロープを掛けてタワーに引き寄せた。風があるとアンテナの向きを変えるのは大変だが、風が無ければそれ程厄介な作業ではない。バラン交換後タワーに張り付いた状態でのSWRは1.1だったが、中心周波数がだいぶ高かったので心配したが、マストに取り付けると正常に戻っていたので良かった。

 

<工事器具>

アンテナの吊上げにはウインチを使うが、ワイヤーがタワーに当らないように簡単な吊り具を使用した。がっちりと固定して横に動かせなくなると、マストに取り付けるときに困るので、マストからは1点吊りとして、ブームは前後のバランスを取って水平に吊るのが一番仕事がしやすいようだ。吊り具は足場単管とアイボルト、滑車などを使って自作した。ワイヤーロープで吊下げた足場単管に、滑車を通してワイヤを下げるようにした構造だが、結構重いので持ち上げるのに苦労する。機会があれば軽量化も考えてみたい。滑車のワイヤーカバーのロック機構が壊れて外れそうになっていたので改良する必要がありそうだ。

 

ブームの準備 ブームの引き上げ エレメント取付 エレメント取付 エレメント取付終了 マストへの取付 マストへの取付終了
 
  給電部故障修理工事 アンテナ工事完了  吊上仕掛け バラン交換工事 バラン取付 バラン交換工事
工事スタッフ 工事スタッフ 不良滑車  吊上げ仕掛け バラン交換工事 エレメント曲り修復 ブームステー修復
【記:JA1PEJ/中村】

性能・特性など】

使用感

WPX CW コンテストで6エレ八木アンテナの威力を試すことができた。SWR はロングブームのためにほとんどフラットで問題ないことは、すでに測定済み。問題は飛びとパターンだ。前のフルサイズ5エレと比べて明らかに飛びが違うことが先ず感じられたことは予想外?だった。以前だとCQ を出しても時折コールがある程度だったものが安定してUSA やヨーロッパよりコールもされ、パイルアップも負け知らず、になったようだ。パターンはKH6DD ハワイの局が、フロントでS9振っていたのがサイドではほとんど聞こえなくなり、バックでもサイドよりチョット聞こえる程度になり、パーファフェクトだった。SWR、パターン、飛びとも申し分なく、「こんなに簡単に設計どおりのアンテナの建設が可能ならもっと早くやればよかった」と言うのが本当の感想だ。正に設計どおりの性能が簡単に実現できた。残るは台風などの風にどのくらいの耐久性があるか が今後の課題となる。

 

<共振周波数の変動

工事中にSWRを測定したところ、アンテナが垂直に傾いている状態では同調点が高くて心配したが、元の位置に戻したところバッチリ下がってベスト状態になった。中心周波数は14.20付近かと思われるが、バンド幅が広く14.00から14.35までは1.2以下に落ちている。修理が終わったアンテナをFT-920のSWRメーターで確認したところ、バンド全体でもひとメモリしか表示せず1.1だった。

             
             
【記:JA1PEJ/中村】

アンテナ故障の記録

ブームステーの緩み>20130422

何となくブームが少し垂れ下がったように見えていたが、そのうちブームステーが緩んでいるのが見えるようになり、確認したところブームステーを止めていたシャクルがマストから外かかってネジも抜けていた。

 

給電部が焼損>20120916

カブリが酷くなっ て何かおかしいな、と感じていたがSWR計で見るとSWRは正常値を示していたので、しばらく使っていたが、段々とSWRが悪化しSWR計でも異常値を示すようなった。点検したところエレメントのセパレーターが焼損していたので交換した。

 

<エレメントが折れ曲がる>20110312

東日本震災でリフレクターの両端が折れ曲がった。SWR値は変わらず性能的には影響が無いようだったが、一旦取り外して修正した。

 

< バランの端子が溶解>20080726

W2AUバランの端子部分が焼損した。SWR計によるチェックでは、SWRが3.0位あって周波数を変えてもまったく変化せず、インピーダンスを測定すると約2メガおきに0Ωまでディップし、同軸ケーブルのインピーダンスを測っている状態だった。しかし、実際に使ってみると普段と変わりなく使えるし、ビーム特性にも以上を感じなかったので、バランが故障していると は思いつかなかった。スタブマッチなのでケーブルの芯線とシールド線は導通があるはずだが無限大だった。

 

< エレメントが曲がった>200503

3.5のバーチカルアンテナのステーが切れて風が吹いて大きく揺れていたが、14メガのアンテナに当っていたらしく、リフレクターの先端が曲がってしまった。しばらくそのまま使っていたが、格好が悪いのでしばらくしてから修理した。

       
        ブームステーの緩み  給電部のセパレータ焼損 同軸ケーブルの状態 
地震で曲がったエレメント エレメントが曲がったときのSWR SWRが悪化したので同軸ケーブルの状態を目視チェック SWRが悪化したのでバラン状態を目視チェック 端子が溶解したバラン 端子が溶解したバラン 3.5のアンテナが当って曲がったエレメント
【記:JA1PEJ/中村】

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