3.5MHz用バーチカルアンテナの記録 Omnibus Contest Club JA1YPA

【フルサイズアンテナの建設計画】

3.5メガのアンテナは当初フルサイズを設置したが、構造が貧弱なうえにメンテナンスに手が回らないこともあって、設置したもののさほど使うチャンスも無いうちにステーが切れ、間もなくしてエレメントも折れてしまった。その後、長期安定稼動を第一に考え、各セクションの二重化部分を増やして強度アップを図ると共に、エレメント長を約35%短縮し自立型として、メンテナンス面で手間の掛からない自立式構造で再スタートした。しかし、当時の方法ではどうしても満足できる性能にならず、短縮コイルによる位相調整が難しいのだろうということで、構造がシンプルで調整がしやすいと思われるフルサイズ構造に敢えて復帰することになった。

     
最初のフルサイズアンテナ ステーが切れて曲がったエレメント 短縮して自立式とした2回目のアンテナ       現在のアンテナ
 

【MMANAを使って設計】

【短縮型からフルサイズへ変更】

MMANAでエレメント寸法を計算してみた。当初はエレメントの基部からバランまでのリード線を無視していたが、どうやらこの部分で共振周波数が大幅に変動するようだ。この部分は接続するエレメントとリード線との関係からエレメントの太さが著しく異なるので、シミュレーション結果にも大きな変動が生じるので要注意だ。MMANAのDM1を400にしてシュミレーションすると、エレメント全長が19.8mとなったが、DM1を800にすると21.56mとなった。

位相差によるパターンの変化については良く分からないので、給電部の電流位相を実測してみたら、90度の位相ケーブルでは90度から145度くらいの位相差になっていることが分かった。これでどんなパターンになってなっているのか知りたいところだが、このままMMANAに投入すると、とんでもないパターンが出てくる。某ブログによると、MMANAでは給電位相値を電圧で与えないとならないらしい。言われてみれば、たしかに給電電圧と書いてある。1/4λの集中定数回路を入れれば電流値に変換できるらしいが良く分からんのでパターン確認は出来ていない。

MMANAでは給電ケーブルを含めたシュミレーションになっていない。このため給電点の合成インピーダンスがどうなるのか良く分からない。ラジアルの展開も実際にはかなり複雑になってしまい、データー設定が出来ていないのでビームパターンについては宿題としておきたい。

             
             
【記:JA1PEJ/中村】

【アンテナ構造など】

【エレメント】

エレメントは、これまで使っていた短縮型の3.5メガ用バーチカルアンテナを基本として足りない部分を延長した。短縮型のエレメント長は16mほどしかなく、フルサイズにするには5mほど不足するので下側に4mのアルミパイプを延長し、短縮コイルが付いていたパイプから上の部分をそっくり取り替えて延長した。下部のアルミパイプは50cm重ねて継ぎ足したので3.5m、コイルから上の部分で0.5m延長したのでトータル20m 程の長さになった。 エレメントの根元の直径は70ミリ、トップは8ミリとなった。3本のエレメントは全て同じ構造、寸法で製作した。

 

【給電ケーブル】
給電ケーブルはエレメントの基部から位相切替BOXまでのケーブルで、3本とも同じ長さなら問題ないと考えられるので、およそ20mほどの長さになっている。先端にフェライトコアーを20個ほど通してフロートバラン構造としている。
 

【エレメントの配置と高さ】

3本のエレメントは、2本をほぼ南北方向に向けた三角形に配置したので、ビームの方向は概ねW向けとEU向け、および南方方面に向いている。給電点の高さはエレベーテッドラジアルとするために約8mとしている。

 

【ラジアル】

ラジアルはエレベーテッドラジアルで各エレメント毎に3本設置することにした。3本のラジアルのうち1本は三角形の内側に向け、他の2本は外側に向けて、なるべく同じ張り方になるように心がけたが、敷地の関係で必ずしも同じにはなっていない。

 

【バラン】
これまで短縮型のときまでは平衡型バランだったが、バーチカルにはフロートバランの方が良いらしい?ので交換することにした。
同軸ケーブルが10D-2Vなので、コアーの寸法はケーブルがちょうど入るサイズのFT82にした。#43だと10個もあれば足りそうだが、許容電流値が小さいので将来性を見込んで、#61材を20個使うことにした。簡単な構造だが1KΩ程度のインピーダンスが取れれば効果はあるだろうと思う。

 

【ステー取付】
エレメントの長さが20mほどあり、ノーステーで設置するには、エレメント自体が強度が足りないことや、支持部の強度も心配なので、耐久性を考慮してデベロープによるエレメントステーを取り付けた。
ステーの取り付け金具は、Wの文字のような形でパイプを挟み込んで固定する構造とし、パイプに当たる中央部分は少し丸みをつけてフィットするようにした。肉厚3mmで30ミリ幅のアルミ平板を、エレメントにあたる部分が30ミリ程になるように金槌で叩いて加工した。アルミ板を万力で挟んで叩くと作業がしやすかった。

ステーにはデベロープを使用したが、地面近くの部分をイノシシが噛み切る障害が多発したので、地面から1mの部分は針金やワイヤーなどでつないだ。ステーを固定するステーアンカーには農作業用に使う50センチ位のロッドが付いたものをHCで見つけた。

下側エレメント 上側エレメント エレメント絶縁材 バラン内部?? ステー金具 ステー金具   調整後の寸法
【記:JA1PEJ/中村】

アンテナの組み立て

【エレメントの延長】

最下部に70ミリのパイプをつなぎ、有効長にして3.7m を延長した。中に入るパイプには既にネジ穴が開いているので、外側のパイプに開けるネジ穴の位置決めに苦労したが、首尾よくキチント合わせてあけることが出来た。その気になって考えればそれなりの知恵は出てくるものだ。
エレメントの絶縁用として、固定部分に割りを入れた塩ビパイプを取り付けた。一番下にバランをつなぐネジも取り付けた。パイプを接続したネジは、長すぎると設置工事のとき邪魔なので、サンダーを使って切断した。

工作室の近くで2分割して組み立てたエレメントをアンテナエリアまで運んで1本のアンテナに組み上げた。元々つながっていた部分なので特に問題も無く完成した。エレメントが完成した時点で設計の間違いに気づいたが、エレメントを延長しなければならなかったが、構造的に20cmしか延ばせず、不足する60cmはリード線の長さで調整することにした。エレメントの全長は19.98mとなった。

 

【バランなど給電部の組立て】

これまではバランを接続するリード線をネジ止め構造としていたが、ネジの部分で緩みがでたり、錆が出て接触不良になったことがあるので、同軸ケーブルとリード線を直にハンダ付けして引き出すことにした。ココアーなどは塩ビパイプでカバーをしたが、リード線や同軸ケーブルなどの隙間があって浸水するため、水が貯まらないように水抜き穴をあけることにした。

 

ステーの取付

ステーへの加重はそれ程大きくないので、ワイヤークリップ1個で 止めて、すっぽ抜けないようにループさせる手法で固定していたが、デベロープは クリップを強く締め過ぎるとつぶれて反って強度が落ちるので緩めに締めるために、シンプルがずれて角でデベロープが切れたらしいので、ワイヤークリップを使うのをやめて、3本で編みして固定することにした。 また、ステーが風で揺れたときに、エレメントや周囲の金具に当たって擦れたり、繰り返しの曲げモーメントが掛かかるようなので、シャックルとリング金具などを使ってデベロープに傷が付かないように取り付けた。

 

エレメント固定部の絶縁材】
最初肉厚の薄いVUパイプで作ってみたが薄くて耐圧が不安だったので、後になって厚みのあるVPパイプが入手できたので交換することにした。太さが65ミリのものだが、わりを入れて開いて差し込むと10ミリ程の隙間が出来るので、取り付ける時にはなるべくネジなどの突起物が近づかないように気をつけることにした。かなりきつく挟み込まれて簡単にはずらせないので、取り付け金具の上下間隔を事前に決めて合わせて置く必要がありそうだ。

 
エレメントの組立 ステーの取付作業 ステーの接続 クリップの緩み ステーの擦れ跡

 

変更後の取付

 

 
【記:JA1PEJ/中村】

【アンテナ建設工事】

<強力な助っ人>

夏休みで時間の取れた菊池さんが、素晴らしい工事用身支度で助っ人に来てくれた。これで今日は楽勝で終わると思って作業を始めたが、、。不覚にも、あまりの暑さに自分が体調を崩してしまい、足を引っ張ってしまった。雷にも足を引っ張られたが・・・。アンテナ作業はタワーの上と下での共同作業が多いので、二人いると作業効率が格段に上がる。
 

<エレメントの設置>

エレメントの1/3くらいのところにロープを掛け、根元を固定してから鋼管柱の上から引き起こした。下から持ち上げてもらうと人力でも容易に引起せるが、一人の時にはウインチを使ったほうが安全だし、はるかに楽に出来る。引起したエレメントは、鋼管柱に沿わせて立ち上げたエレメントをU型の固定金具に通した状態で、一番下側にフックを掛けてウインチで引き上げ、固定金具で柱に固定する。 短縮型からフルサイズにな り、固定金具の強度が少し心配だが、ステーを張るので大丈夫だろうと、取り付け部分の構造は元のまま使うことにした。取り付け後の様子では特に問題は無さそうだ。

台風の影響でステーが外れ支持金具とともにエレメントが傾いたので修復した。風が吹いていたので支持金具の取り付けネジを緩めても、腕力では元に戻せなかったが、ステーを引っ張って引起すことができた。

 

【エレメントステーの設置】

アンテナが敷地境界近くに建っていてステーの展張角度が十分取れていないので強度的には不安がある。南側のエレメントは南側の2本のステーの水平角が140度位になっているし、東側のエレメントは東側のステーの垂直角度が30度以下になるようなので、状況を見ながら対策が必要かどうか判断したい。隣の敷地から木の枝が張り出してきて、ステーにあたってしまうので枝打ちをする必要がある。枝打ちが出来ずステーが切れるような場合は、部分的にワイヤーに換えるなどの対策が要るかもしれない。ステーが切れると風で飛ばされて近くの木の枝に絡んで取り外すのが大変だ。

 

<エレメントステーの長さ>

アンテナが山の斜面に有って、ステーの長さが張る方向それぞれに異なるので現場合わせで長さを決めた。時間は掛かったが、デベロープを無駄にすることなく、用意した材料で全てのステーが完成した。

 

<ラジアルの設置>

ラジアルは調整のためにナイロンロープで延長して張っていたが、度々イノシシに噛み切られ何度か繰り返すうちに元の長さが分からなくなることがあった。ラジアルの張り具合が変わると、共振周波数やインピーダンスが変化してSWRやビーム特性が悪化するので、噛み切られないように鉄棒を打ち込んで、銅線を使ってラジアルを固定し た。

エレメント取付 エレメントの固定 バランの取付 ラジアル固定 北側エレメント 東側エレメント 南側エレメント
   
3本のエレメント ステーの固定 ステーの固定 ステーの固定   邪魔になる木を伐採  
【記:JA1PEJ/中村】

位相切替器

<ビーム切替用リレーBOX>

三角形に設置したエレメントから、それぞれの給電ケーブルをアンテナ群の中心に集め、2本の位相ケーブルと切替リレーを使ってビームを切り替えることにした。リレーは一般の電気回路用のコンタクターだが、周波数が低いので何とか使えるだろうと試してみることにした。ビーム方向は東北、西北、南の3方向だけとして調整のしやすさを優先した。

 

<リレー回路の配線変更>

ビームの切れが良くないので、位相ケーブルの切替回路の配線が影響しているのではないかと考え回路を変更してみることにした。1/4波長の位相ケーブルのコネクターを固定していたアルミ板をベーク板に変えて、各エレメント用の位相ケーブルを絶縁し、芯線とともにシールド側もリレーで切り替えることにした。リレー接点が2倍必要になるが、4回路のリレーを使い3個のリレーで間にあわせることができた。リレー回路の配線はなるべくインピーダンスに影響しないよう、長いところは同軸ケーブルを使って配線した。配線材料はある程度のハイパワーにも耐えるよう、3Dー2Vくらいのテフロン製の同軸ケーブルを使った。テフロン製なので半田ごての熱で絶縁材が溶け出すことがなく、太さもあまり太くないので配線作業にはそれほど苦労はしなかった。コネクター部分はシールド側を直接コネクターに半田付けした。

 

リレー回路の配線変更>2012
アンテナのSWRが悪化したとき、リレー回路の原因と勘違いしてリレーを交換したが、そのとき接点数が足りないので芯線側だけ切替えるような回路にしたところ、同調が取れず動作がおかしくなってしまった。
回路を元に戻して作り直し調整したところ、チャンと同調が取れるようになった。SWR値が1.5以内のバンド幅は50KHzくらいあるようで、ビームを切替えてもSWRが大きく変動するようなことも無かった。リレーの接点容量が小さいので耐力に不安があるが、ベアフットでチェックした範囲では、これまで起きていたSWR値の変動が無いようなので、先ずはひと安心だ。

 

【記:JA1PEJ/中村】

 
リレーの配線 リレーの配線 リレーBOX    旧リレーBOX 旧リレーBOX 旧リレーBOX
【記:JA1PEJ/中村】

マッチングBOX

<チューナーの故障>
3.5メガ用の3エレ垂直アンテナのとび具合も良くないというので調べてみた。アナライザーの測定では全く問題なかったので発見が遅れたが、送信出力が25Wを超えるとSWRが急激に2.5以上になり、パワーを下げても悪化したSWRは戻らず、一旦送信をやめるとSWR値は元に戻る現象が確認できた。ちょうどどこかでスパークしているような現象なのだが、簡単に見える範囲ではスパークした痕などはなかった。送信系統全体の動作チェックをしてみたところ、アンテナチューナーの不良が見つかった。チューナーのロード側のエアバリコンの真ん中付近でスパークし、羽根が変形してくっつきそうになっていた。羽根を延ばして修正してみたが直らなかったので修理を諦めて自作することにした。

 

<コイル、コンデンサーなど材料集め>

壊れたチューナの回路が簡単で作り易そうに思えたのでまねをすることにした。コンデンサーを直列に配置したT型ネットワーク構成で、3.5メガ専用なのでバンドスイッチは使わず、コイルとコンデンサだけの超シンプル構成となった。エアバリコンでは耐圧が足りないと思ったので、VVCを使うことにしたが、容量が100pFほどのものしかないので、ドアノブコンを追加して容量を増やすことにした。使う目的がこのアンテナ専用なので調整範囲が限定されるので、付加コンデンサー方式によって調整範囲が狭くなり、 使いやすくなるかも知れない。

コイルは以前アンプを改造したときに作ったタンクコイル(約7μH)があったので流用した。また、アンテナの近くの屋外に設置するための収容BOXとして、鉄製の小さいキャビネットのようなジャンク品をオークションで入手した。

 

<部品配置など構造検討>

急ぎの作業が一段落したのでアンテナチューナー作りを開始した。コンデンサーとコイルは15ミリ位のエポキシ材で絶縁して取り付け、木の板に載せて固定したものさらに、鉄製キャビネットの棚板に載せておく構造にした。逆さまにして使うことも無いのでこれで十分だろう。キャビネットはかなり古いジャンク品でシールド効果はあまり無さそうだが、プラBOXよりは良いだろうと思われる。位相切替のリレー回路も一緒に収容したかったが、少し小さいようなので、とりあえずチューナーだけ組み込んで様子を見ることにした。
VVCの取付方法は工作に手間が掛からないようアレコレ考えたが、結局これまでと同じようにL型の金具で取り付けることにした。コイルはエポキシ材に直接ネジで止めて、銅板を使って配線し接続部分はハンダ付けをすることにした。VVCはアナライザーで一度調整をしてしまえば、使用中にコンデンサを回すことは無いので、シャフトにノブをつけただけで特に絶縁はしていない。
 

<動作テスト>
だいたいの配線ができたところで動作テストをしてみた。3エレメントバーチカルアンテナの合成インピーダンス(約15Ω程度)と50Ω同軸ケーブルをマッチグさせるため、負荷側に低抵抗のボリュームをつないでSWRアナライザーでSWRの調整具合をチェックしてみた。2個のバリコンを相互に少しずつ回していくと、面白いほどにSWRが下がったが、1.1に近づくとバリコンが目一杯入り込んだ状態になって、それ以上は調整ができなかった。材料を探すときに行った実験では、入力側が66pF、出力側が125pF、コイルが6.8μHでチューニング取れたのだが、いったいどうしたことか・・・・・。後で固定コンデンサーの定数を増やすことにした。
 

アンテナを使って動作テスト
組み立て上がったアンテナチューナーを鉄箱に収容し、同軸コネクターを取り付けて動作テストを行った。想定していたことだが、同調周波数が上方にずれていて下限でも3.8メガ位までしか下がらなかった。VVCに付加していたコンデンサーを入力側と出力側それぞれ50pFと100pFに交換したところ、アンテナを接続した状態でSWRを1.1まで下げることができた。バンド幅が少し狭いようだが、SWR1.5以下の範囲では40kHz くらい取れるようなので、何とか使えるだろうと思う。
 
<チューナー
の取り付け
動作チェックが済んだので、錆が出ている収容箱をスプレーラッカーで塗装し、これまで使っていたプラBOXを取り外して交換した。収容箱は据え置き型で奥行きが少し幅があるので、取り付けが厄介だったが既にあいていた穴を利用して、横向き方向で無理やり取り付けた。しばらく様子を見て具合が悪いようであれば付け直すことにしたい。

【記:JA1PEJ/中村】

 

故障状況の調査 コイル部品 VVC(入力側) VVC(出力側) 絶縁材料など 部品の配置検討 仮配線
 
仮テスト 収容した様子 完成 実動作テスト SWR1.1 設置完了  
【記:JA1PEJ/中村】

【アンテナの調整

<先ずはSWRから・・・>

ローバンドで少しでも高性能アンテナが欲しいと考えて採用した位相給電方式だが、本に書いてある通り90度移相ラインを切り替えるだけで、マッチングなどはほったらかしのままになっていた。他のアンテナがだいぶ安定して時間が取れるようになったので、給電部分の調整をして使い物になるアンテナにしたいということで、マッチングユニットの動作確認を開始した。
 

<単体動作の確認>

3本のエレメントのうち、1本だけ給電線とラジアルをつないだ単独状態でラジアルの張り角度を変えてリアクタンスが一番下がるように調整した。調整の結果、どうやらエレメントが長すぎるようなので、給電部のリード線の長さを短くした。測定結果では100kHzほど低めだったので、リード線を接続に必要な長さだけ残して50cm程切ってみたらSWRの中心が3520kHz付近になった。中心周波数(3520KHz)において、SWRとインピーダンスは、№1エレメントが1.3(R37+J2) 、№2が1.1(R61+J0)、№3が1.2(R38+J0)となった。エレメントは3本ともまったく同じ構造にしたが、周囲の状況によってエレメントごとにバラつきが出ているようだ。3本のエレメント全部に給電線とラジアルを取り付けると特にリアクタンス値がずれるようだ。

東側と南側の2本は同じようなやり方で、同じような結果になったが、北側のエレメントはどうしてもSWRが中心周波数では最良にならなかった。給電部のリード線ではこれ以上短くできないし、エレメントの長さを変えるのは好ましくないように思うので、取り合えずこのまま先に進めることにした。
 

<エレメント相互の関係>

3本のエレメントのうち、東側のエレメントは他のタワーの影響が少なそうなので、最初にケーブルをつないで1本だけでSWRをチェックした。その後、他の2本にもケーブルとラジアルをつないで、東側のエレメントを再度確認したら、大分ズッコケていた。3本のエレメントがそれぞれ関係し合った状態なので、この状態では各エレメントを調整しても意味が無さそうなので調整はしていないが、共振周波数が少し低い方に下がっているようだ。給電用の同軸ケーブルを3本ともつないで、ケーブル端での単体インピーダンスと合成インピーダンスなどを測ってみると、インピーダンスは17+j15でSWRは3くらいだった。アンテナカップラーをつないで調整するとSWRは簡単に1.0まで下がった。ビーム方向を切替えるとSWRが変化するが、大幅にずれないように確認しながら調整したところ、3方向のビームとも、1.3位に収まることが分った。
 

位相測定ケーブル

給電部の位相を確認するために給電部の電流を検知するテスト用ケーブルを製作した。トロイダルコアーにエナメル線を巻いて作ったピックアップコイルを同軸ケーブルに取り付け、反対側にはBNCコネクターを取り付けた。アンテナの調整のために一時だけ使うものなのでできるだけ手を省いて、コイルなどはむき出しのまま使うことにした。ケーブルは安価で手に入る3C-2Vで100mのものを3等分して使った。

測定ケーブルがちゃんと使えるかどうか動作確認をした。トランシーバの出力をダミーで終端し、ビニール線をピックアップコイルに通して波形を観測した。ケーブルの終端抵抗を入れていないので、かなり少ない電力でも振幅の大きい波形が観測できた。

東側のエレメントの位相がどうもおかしいのでケーブルをチェックしてみたところ、同軸ケーブルの位相が1本だけ30度もずれていた。どうやら安物同軸ケーブルの不良らしく、巻き始め部分の1.5m位を切り取ったところ、3本とも同じ位相になった。

 

位相差の調整

オッシロスコープで給電点の位相差を確認してみた。画面上のラインは上からNエレメント、Eエレメント、Sエレメントの順で、NEビームではNとEの位相が120度から145度くらい遅れている。Nエレメントが25度くらい余計に遅れている原因は不明。NWビームではNとSエレメントがほぼ同じく90度遅れている。SEビームではEとSエレメントの位相が110度から120度ほど遅れている。Sエレメントの方が遅れている原因は不明。
位相ケーブルは同じ長さの同軸ケーブル2本を用いてリレーで切替えているが、つながるエレメントのインピーダンスの違いによって50度近い差が出るようだ。特にNエレメントでの遅れが大きい。エレメント構造はまったく同じだがラジアルの張り方や、周囲のタワーの状況が異なるのが要因だろうと推測される。
実験をするたびに新たな現象が出てきて混沌とすることがあるが、アレコレやっても無駄骨になるので深追いせずに、使って見て確かめるのが良さそうだ。

 

<調整作業で分かったこと>

1.ラジアルは長さより張り方(緩め方)によって、SWRと共振周波数が変動する。

2.同じような長さ、高さの金属は、アンテナの動作に大きく影響する。

 

     
 単体の時のSWR 3本合成後のSWR 給電電流検出コイル 検出コイルの取付      
 
テストケーブルの位相  NEビーム時の位相 NWビーム時の位相 SEビーム時の位相   SWR調整の様子 位相確認の様子
【記:JA1PEJ/中村】

【動作性能など

 

<聞こえ具合は?・・・>
SWRとしてはマズマズ使えそうなので、トランシーバをつないで聞こえ具合をチェックしてみた。ローカルのラグチューと何やらノイズが聞こえたがリレーを切り替えると、信号の強さがかなり変わりビームが出ていることが感じられた。Sメータの読みで2つくらいは差が有るようなので、ほぼ設計通りの結果になっているようだ。今後位相差を調整しなければならないが、このままでもかなり使えそうだ。
 

<動作確認など>
120716バーチカルアンテナの特性が元に戻ったようなので、ビームの様子などを試してみた。国内ラグチューが聞こえたので、ビームを切替えてみたところSにして2~3つほど変化するようなので、マズマズの動作になっているようだ。
最近作ったスモールループアンテナと聞き比べようとしたが、スモールループアンテナのノイズが多くて比較状態ではなかった。スモールループアンテナをもっとシャックから離して設置するなど、ノイズ対策をしてから再度やってみる必要がありそうだ
 

             
             
【記:JA1PEJ/中村】

【故障の記録】

【 エレメントステーの断線】20130417

東側エレメントの東側ステーがアンカーのところで抜けたので固定方法を変更して再接続した。

 

【 エレメントステーの断線】20130410

南側エレメントの西側ステーがエレメントとへの接続部で切れたので、ステーの固定方法を変更して再接続した。

 

【ステーが切れた】20130408

発達した低気圧の影響で西からの強風が吹き、またもや南側のエレメントのステーが1本切れた。切れた部分の痕跡を調べたところ、ステー取付部のコースターがエレメントに擦れていたようだ。ステーがチャンと張られていれば、コースターがエレメントに当る筈が無いが、建設時のミスでエレメントが少し回転しステーがエレメントに絡みつくように固定されていたのでは無いかと思われる。

 

【 エレメントステーが外れた】20120404

台風の影響でエレメントステーが外れてしまい、吹き続ける強風でエレメントが今にも折れそうなほど傾いていた。何はともあれ、外れたステーを仮につないで、曲がったエレメントの修復作業に掛かった。3本のエレメントとも、支持金具がずれて北側に傾いており、ステーは風に吹かれて隣のヒノキの枝に絡んでしまい引っ張ったくらいでは外れなかった。幸いエレメントにはダメージが無かったので何とか無事に復元できて良かった。曲がったエレメント取付部は、鋼管柱に登って支持金具の取り付けネジを緩めても、ステーが効いていて腕力ではどうにも動かなかったが、ステーを引っ張ったりして何とか修復できた。風が吹いていなければもっと楽に復旧できたかも知れないが、アンテナがベコベコにしなっていて、ステーを外すとそのまま倒壊してしまいそうだった。
 

【錆びたネジの交換】20120419
取り付けネジがだいぶ錆びていたので、亜鉛ドブ付けメッキのネジに交換した。エレメントにはステーがとってあるので、取り付けネジを1本外してもアンテナが横に曲がるようなことは無かった。錆びたネジを取り外すのにエラク時間が掛かったが、無事に12本全部のネジを交換した。
 

【位相切替回路の不具合】20120716

ビームの切れがいまいち物足りなく感じていたので、位相を確認したらやはりずれているようだ。しかし、NW方向の位相はほぼ設置当時のままだったが、NEビームはどこがどうなったか分からないほどずれていて、ラジアルをいろいろ張りなおしてみたが、さっぱり調整できる気配すらなかった。しらべてみるとSWR計でも現象が確認できたので確認したところ、リレー回路のハンダ付けの外れが見つかった。
 

【チューナーの故障】20121205

アナライザーでは全く問題なかったので発見が遅れたが、送信状態でパワーを上げていくとSWRが急激に悪化するので、内部を調べたところバリコンがスパークしていた。

 

     
台風で傾いたエレメント 取付ネジのさび 切れたステー ステーが切れたエレメントの様子      
【記:JA1PEJ/中村】

【その他】

<記事>

記事

 

             
             
【記:JA1PEJ/中村】

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