K9AY型受信アンテナの記録 Omnibus Contest Club JA1YPA

【受信アンテナ設置計画】

受信アンテナの必要性

ビームアンテナでは急な方向転換ができず、コンテストではビーム方向以外からコールされたときに、相手の信号が聞こえづらくて困ることがある。アンテナが北を向いているときに、アジア方面から弱い信号で呼ばれたときのタイムロスが問題だという意見が多いので、取敢えず南向きの受信用アンテナを検討してみることになった。理想としてはW方向とEU方向、それに南向きに専用のアンテナが設置できればベストだがそうも行かない。

 

K9AYアンテナの構造など>
メインアンテナのバックやサイド方向からの信号が聞こえればいいので、なにも大掛かりなアンテナでなくとも済みそうだが、ダイポール程度ではイマイチ物足りないと思ったので、3エレ八木程度のビーム特性を持つ、EWEアンテナもどきのK9AY型という受信専用アンテナを試してみることにした。ゲインがマイナスゲインで、片端を接地する必要があり、地面近くに設置されるために弱い信号は聞こえないようだが、ビーム特性を効果的に利用した混信防止には役に立つらしい。送信には使えないがコンパクトで製作が容易なので、多方面に張って切替えて使うには便利だろうと思う。

EWEアンテナの名前の由来が良く分からないが、このアンテナには、FLAGアンテナとかKAZアンテナとか呼ばれる形もあるらしい。全長17m程のビニール線の真ん中を、6mほどのグラスファイバーポールの先端にエレメントを縛りつけ、30度位の角度で両方向に引き下ろし、6m位のところからポールの根本の方に引き寄せた菱形で、パンタグラフのようなエレメント構造になっている。中央部分の片方から給電し、もう片側には抵抗を入れてアースに落として終端する。抵抗の大きさでもビームの形が変化するらしいが、インピーダンスは1kオーム近くなるらしいので、1:9の変換トランスを給電部に入れることにした。ビバレージアンテナの変形のような形にも見えるが動作原理は全く異なり、給電部方向にビームが向くことになるらしい。

 

ビーム切替リレーBOX
エレメントの終端抵抗と給電点を切り替えるためのリレーBOXが必要になるが、南北用と東西用の2回路分作って4方向にビームを切り替えられるようにする。さらにコモンモードによるノイズ対策として、コアーに同軸ケーブルを巻きつけたフロートバランを取り付ける。終端抵抗はVRを使って受信しながら遠隔で調整するのが良いらしいが、面倒なのでシュミレーションで得られた値に近い820Ωにする。

 

ビーム操作器
リレー用電源と切替SWを取り付けた切替器を作って簡単にビームの切り替えができるようにした。DC24Vのリレー電源は、スイッチング電源だとノイズが出て対策が面倒なので、トランスと簡単な整流回路を使うことにして材料を探した。バラック配線で試してみたところ何とか使えそうな部品が見つかったので製作した。最初はありあわせのトグルスイッチを使ったが、使い勝手が良くないのでロータリースイッチに交換した。ビーム方向が直感的に分かるので使いやすくなった。
 

   
全体概要図 エレメントサイズ   ビーム切替リレー   操作SWの配線 ビーム操作器の外観
記:JA1PEJ/中村】

【アンテナ性能の実験】

K9AYアンテナの仮設置

シャックの脇にグラスポールを立てて、エレメントを1本だけ取り付けたバラックセットで、7メガの国内局を送信アンテナと聞き比べてみたところ、Sにして2から3つ位下がる程度で受信できるようだ。いろいろ聞き比べてみると殆ど変わらない信号もあるほどだった。S/N比など他にもいろいろ違いはあるだろうが、うまく使えばそれなりには使えるような気がした。

その後、リレーBOXができたのでつないでビームの切れ具合を試したが、 このときは明確なビームの感触は感じられなかった。シャック脇の狭い場所に設置したためノイズを拾っていて、受信信号が変化しているのかノイズレベルが変化しているのかはっきりしない状況だった。リレー電源からもノイズが出ているようだし、エレメントをつながないでも僅かに受信できるので、リレー回路での漏れが生じているようだ。

どうもうまく働いていないようだが、仮設置状態なのでアースが不十分だし、周囲に金属製のものが多いなど、いまの状態では性能判断はできないだろう。ノイズ対策はシャックから少し離れた場所に設置する必要がありそうだ。

       
実験用のエレメント 実験用給電部 実験用バラン        
【記:JA1PEJ/中村】

【実用アンテナの製作と設置】

設置場所の検討>
概ね実験も終わったので設置場所をさがして実用化テストをすることにした。送信アンテナが立っているエリアには、送信アンテナの影響を避けられるような場所も無く、遠くて同軸ケーブルを引くのも大変なので、シャックの南側に設置することを検討した。シャック付近ではノイズが多くて問題があったのでなるべく離れた場所に設置することにした。笹薮を刈り取って雑木を数本伐採し、10メートル四方ほどの敷地を確保した。受信専用アンテナなので、エレメントが木の枝に掛からなければ良いだろうと考え、伐採は最小限にしておくことにした。鉄パイプを打ち込んで基礎を作り、グラスポールを縛り付けた。エレメントの片側をアースに落とすため、地上高く設置できないので、周りが開けてないと困るのかも知れないが、南側斜面に設置するので南向きのアンテナとしては問題は無いだろう。

 

K9AYアンテナ製作と設置

エレメントは約17mのビニール線を2本、13mのグラスポールの先に縛り付けて、南北と東西用にパンタグラフのようにナイロンロープを使って展開した。受信用なのでSWRの値は送信用ほど気にすることは無いだろうが、MMANAでシュミレーションした結果では、給電点のインピーダンスが820+j0位になり、1:9のマッチングトランスを入れるとSWRが2.0以下にはなるようだ。

1波長より短いコンパクトなループアンテナで、設置工事は実に簡単だし・・・・・・。こんな簡単な構造で本当に使い物になるのか、大きな期待はできないだろうが・・・・・・うまくいくといい・・・・・。

同軸ケーブルには安物の3D-2Vを使ってシャックまで引き込んだが、シールドの面から考えればもっと太いケーブルがいいだろう。ノイズの影響を避けるためにシャックから離れた場所に設置したので、地面近くにあるにも関わらず、ケーブルの長さは35m も必要だった。同軸ケーブルは地面を這わせて引き込んだが、線が細いので保護カバーが無いと耐久性の問題がありそうだ。グラスファイバーポールを少し持ち上げて、地面から60cm位のところに給電部を取り付けた。切替リレーの電源と制御線には、古いローテーター用のケーブルを流用した。リレーが小さいのでケーブルは電話ケーブルのような細いもので間合うが、ビーム制御用2芯とリレー電源用2芯のケーブルが必要で、ローテータ用ならば屋外でも安心だ。

 

K9AYアンテナの使用感

早速国内のラグチューを聞きながら、リレーを動かして見たところ、信号は変化するもののイマイチのような・・・・・。動作テストではどうもイマイチだったので、配線をチェックして極性などが間違っていないことを確認した。しかしどうしても、極性を反転した時の動作がおかしいので、切替BOXを持ち帰って詳しく調べてみたら、リレーの動作電圧を12Vと勘違いしていて電圧が不足だった。

ビーム切替回路を作り直したので、再度取り付けて動作チェックをしてみた。多少変化しているようだが、耳で聞いた感じではそれほど大きな差は無いようだ。FB比としては10dB程度しか取れていないようだが、ローカルエリアのラグチューより、8エリアの信号で比べた方がレベル差が感じられるので、DXの信号だともう少し違いが出るかも知れない。もう少し時間をかけて確認してみる必要がありそうだ。
受信用アンテナと4エレ八木とを聞き比べをやってみた。受信用アンテナは南向きビームなので、北方向に向いている4エレ八木より強く受かる信号があるかと思ったが、4エレ八木の方が断然強力に受信できるようだ。地面すれすれのアンテナと30mHのアンテナで比べても比較にならないだろうか。TRXのATTで確認したところ、12~18dBの差が感じられるので概ね計算通りといったところか。受信アンテナは垂直偏波なので、もっと遠くの信号だと変わらないだろうか・・・・・・・。7メガ用に作ったこのアンテナは、やはり受信感度が低いために、使い方は限定したものにならざるを得ないようだ。受信用アンテナとして送信アンテナとを分離して使うには役不足なようだ。残念だが予定通りか・・・・・・・。

CQWWコンテストに合わせて急いで設置したが、切替回路などが間に合わなかったので、効果は無かったようだ。しかし、ビーム切替が出来て初めて効果が期待できるものなので、もう少し実験を続けてみる必要はあるだろう。

設置場所の確保 設置場所の空間 アンテナ設置状況 給電部の様子 エレメントの2面化 給電部 給電部詳細
【記:JA1PEJ/中村】

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MM

 

             
             
【記:JA1PEJ/中村】

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