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今回コンテストマネージャーをお願いした木下さんと初参加をしてくれた益田さんから、運用状況の投稿を頂いたので原文のまま掲載します。
<2009 CQ WW SSB 参戦記 JI6BRB:益田哲斉 &
JF6DEA/KE1EO:木下司朗>
この読み物は、アマチュア無線家の皆さんが読まれることを前提に、人名は初出のみコールサインと苗字とし、以降はサフィックスで表記する。また、アマチュア無線界で通常使われる言葉は、そのまま表記した。日時(時刻は数字4桁で表記)は全て
JST。
【'09 CQ WW SSB Topics 】
アメリカ東海岸の雄:KC1XX が復活! 2008年12月の Snow Storm でアンテナに壊滅的な被害を受けた KC1XX が、オーナーの
Mat の懸命な復旧により、この CQ WW SSB からコンテストに復帰した。1998年に現地を見たことがあるが、Hurricane Hill
なる地名のいかにも「飛びそう」なロケーションは圧巻! 東海岸の双璧である W3LPL, K3LR と並んで強力な信号を送り込んできており、7MHz と
14MHz で QSO できた。
一方で、C6APR から運用を予定していた Pete:W2GJ, Ed:K3IXD, Randy:K4QO と Dallas:W3PP
の4人の優秀なオペレーターが、ペディションに向かう途上、飛行機事故で SK になった。東海岸から電波を飛ばしてくる W3PP
の信号が、もう聞こえないと思うと寂しい限り。4人の誰にも直接会ったことはないが、同じコンテストを愛好する同士として黙祷を捧げたい。
YPA には今回、共に川崎市から JH6OPP:渡部さんと JI6BRB:益田(ますだ)さんが参加してくれた。どちらも DEA
の「甘~い誘い」に乗ったものだが、さてこの後も YPA に来て貰えるだろうか...?
【参加メンバーと参加部門】
今回集結したメンバーは、クラブ会長の JA1PEJ:中村さんに加えて 地元の JE1PMQ:菊池さん、中村さんから声を掛けて戴いた
JJ8XEO:林さん、いつも DEA と一緒に来る JG4KEZ:宗樂さん、今回初参加の JH6OPP:渡部さんと JI6BRB:益田さん、それに私
(JF6DEA) の7人。OPP, BRB は土曜の開始~日曜午前中、XEO と PMQ
は土曜の午後~日曜の午後と各人それぞれのスケジュールでシャックに滞在。今回、コンテストの始終フルオペできたのは PEJ, KEZ と DEA
の3人だった。
参加部門は、コンディションとオペレーターの人数を勘案し、今回も M-Ops/2-TXs で参加することにした。
【今回の作戦】
東京での生活も2年を過ぎ、そろそろ「賞味期限切れ」が近い DEA は、PEJ
からの「指令」により、今回のコンテストの参謀を任された。昨年の結果と今年の参加メンバー、それにクラスターによるここ数日のコンディションから、おおよその目標を立てる。
=== CQ WW SSB 2009 TARGET ===
BAND | QSO | ZONE | CTRY |
80 | 150 | 30 | 50 |
40 | 1000 | 35 | 100 |
20 | 1500 | 40 | 150 |
15 | 800 | 35 | 100 |
10 | 150 | 20 | 30 |
TOTAL | 3600 | 160 | 430 |
チョット高過ぎか? NG3K
のサイトからコンテスト・ペディションの情報を配布するものをバンド分作成、また、おおよそのバンド別のコンディション予想とオペレーターの時間配分を表にしたものを予め作成した。オペレーターの配分は、日曜の午後にはシャックを離れる
PMQ, XEO, OPP, BRB に土曜~日曜の前半を任せることにし、日曜はイヤでも徹夜になる PEJ, KEZ, DEA
は前半に可能な限り休養とする計画にした。実際には、必ずしも計画どおりには行かなかったが、それでも KEZ, DEA
は前半に比較的休養を取る時間が長かったため、いつもより後半は楽だったようである。
【スタートの躓き】
いつもは立川始発の KEZ と一緒に来るので、土曜日の 0530 に合流している。今回もいつものように 0530 過ぎに KEZ
号に乗り込み、東北道に乗るべく外環道に到達すると「浦和IC
の手前で事故のため渋滞、通過に結構時間がかかる」とラジオの交通情報が報じている。これはマズイ!
途中で一般道に下りて浦和まで走り、いつもより1時間ほど遅れた感じで東北道に突入。開始時間前にシャックに到達するに越したことはないが、こっちが事故を起こせば元も子もない。C6APR
の例もあるので安全を優先し、シャック到着が遅れる見込みの旨、PEJ に連絡。到着までは PEJ がオペレートすることになった。
この日の朝、川崎発の今回初参加:OPP/BRB
チームと連絡を取ってみたら、近場にいることが判明。走っているうちに合流、結局併走してシャックに行くことになり、道案内の手間が省けた。シャックに到達したのは
0940 頃、すぐに DEA が 14MHz で、KEZ が 21MHz でランニングを開始した。
と、ここで今回初参加の JI6BRB:益田さんに参加リポートを一旦バトンタッチ!
===== -...- <CQ WW SSB 2009 Report by JI6BRB> -...- =====
■はじめに
初めて JA1YPA から
DXコンテストに参加させていただきました。初参加にも関わらず温かく迎えていただいた中村さん、菊池さんはじめ、他のクルーの皆さまに感謝申し上げます。1エリアでの聞こえ方が6エリアとどう違うのか良く分からないままでのコンテストだったと思います。24H
の滞在でしたが、久々のコンテストを堪能できました。
■移動
土曜朝 0500 過ぎに JH6OPP:渡部さんと合流。YPA の QTH
がよくわからず、時間的感覚がつかめない。大体3時間くらいと聞いて、それくらい(宮崎->福岡くらいの時間)なんだ。意外に近い。それでも、一路 YPA
を目指すと、途中の事故渋滞で当初見込みより到着が遅れた。数年前までオペしていた JE6ZIH
は、自宅から近かったこともあり、遅くとも大体朝6時過ぎには現着していたので、開始に間に合わない一抹の不安があった。今回声を掛けてもらった
JF6DEA:木下さん、JG4KEZ:宗樂さんとは高速上で合流。
■到着
開始から1時間後にシャック到着。各バンドごとにリグとアンテナが独立しており、M/M も OK の設備に素晴らしいの一言。エントリーは
M/2、これも初めての経験だった。天気は曇り(滞在中はずっとそうだった)。麓から山頂まで車で約5分。木下さん、宗樂さんに先に行ってもらい、先にスタートすることになった。待っている間、なんとなく実家の裏山みたいで感傷に浸ってしまった。
着いたときは 14MHz, 21MHz で、この時点では局数的に 14MHz の伸びの方が良かったようだ。
■初のオペ
1100 に交代。14MHz を担当。初めての設備に対応できるか不安を覚えながら、とりあえず局数を伸ばすことを念頭にひたすら CQ を出した。リグは
FT-920。初めて使用するリグ。元々あまりフィルタを使用しない(あの篭った音が好きではない)ので、交代時はちょっとやり辛った。解除方法を気付くのに?時間も掛ってしまい、機器の使用方法の事前下調べの重要性を再認識。
アンテナの向きは引き継いだそのままのWの Short Path 方向。結構呼んでくる。VE, W が呼んでこなくなると LU, PY,
CEなどが呼んでくる。これの繰り返しだったように思う。後はロギングソフトの CT、キーボードはフルキーボードで打ち易かった。CT
は大体の使用方法を体が覚えていたが、クラスタをどう活かすかが今イチ分からなかった。
W3LPL, K3EST
など、数年前にも良く呼んでくれていた局が呼んでくる。鉛筆と紙がない(あまり必要なかったが)。たまにキーの打ち間違いで入力が遅れることもあった。仕事の疲れか、指が動かない場面も。以前は呼ばれた数局を頭で記憶出来ていたが、今回はあまりできなかったように思う。
ガツンとした開きはこの時点ではなかったが、ずっと居座ることができた。1時間を過ぎたころ、昼過ぎなのに珠にUゾーン(16~19)
も呼んでくる。アンテナはWを向いている。6エリアでコンテストやっていたころより時間的にはちょっと早い。電波が強力だからか? BY
がよく呼んでくる。BD, BG と BJ(?)もいた。電波が強力だからか格好の練習局になったようである。2時間くらいで交代。200局くらいだっただろうか。今回の2時間づつの交代は良かったと思う。
交代後、アンテナ群を見に行った。到着時は悪路で良く見えなかったが、実際見てみてアンテナファームの広さ、各タワーの高さに目を見張るものがあった。40m高の
3.8MHz (2el)
が小さく見えた。高いところが好きな私は、全てのタワーに上ってみたかった。特に40mのタワー。しかし、それはまたの機会にということで今回は断念。
■夜~7MHz のW
OPP さんから交代し、7MHz のヘッドフォーンを着けた瞬間、できるかな?と思った。初めて 7100kHz より上、大体7200kHzに近いところで
CQ を出す。コンディションが良いのか、呼ばれ出すとずっとWの Short Path に向けたまま、Long Path への CQ
を忘れてしまった。1時に寝て3時に起きる。
■朝方の 7MHz のEU
起きて現在の状況をみると、7MHz, 3.8MHz のマルチが結構伸びていた。未だ夜明け前、14MHz, 21MHz
がそろそろらしい。でも、7046kHz 辺りで EU 向けに CQ 出したらぽつぽつ呼ばれだし、段々それが大きくなり、久々に EU
からのパイルを浴びた。クラスタに載ったようである。強力なUゾーンからカスカスの局まで、一気に呼んでくる。全てが同時に呼んできてどれから取るか、少々迷いながらも捕らえられた局を片っ端から取っていった。14MHz,
21MHz が開く前の局数確保には貢献できたと思う。
■午前中の14MHz
朝食摂った後、滞在中最後のオペということで、14MHz で CQ を出す。他の局が 14200kHz くらいで CQ
出している中、14310kHzくらいで CQ
を出す(他が開いていなかった)。昨日の再来か結構呼ばれ出す。昨日と同様走った。あっという間の2時間が過ぎ、1200
過ぎ、まだ、開いている中を交代。帰宅の途についた。
■反省点
今回、素晴らしい設備で運用できたことは本当に嬉しかった。無理して行った甲斐があったと思う。
1エリア、それも YPA から YPA
の設備での各バンドのオープン状況が頭に無く、走っていたからか渡されたペディション情報も全くもって利用しなかった(ゆとりがない・・)。
また、オペ時には、「JA1YPA」を含む自分の発するフォネティックコード正しく伝わっていたか思う場面が度々あった。SSB
コンテストでは重要なこと。個人的に発声練習の必要性を感じた。後は、耳の問題。BY
でさえ、相手コールサインを度々聞きなおしていた。これは日ごろの努力で克服できると思う。上記の反省を今後に活かせられれば、と思う。
===== .-.-. <以上、初参加の JI6BRB リポート終わり> .-.-. =====
【初日の誘惑】
YPA の楽しみは、必ずしも無線ばかりではない。参加者全員での BBQ を楽しむべく、それなりの材料調達を頼んでおいた地元の PMQ
が待ち遠しい。PEJ は土曜の昼を過ぎた頃から早々と火を起こして炭を作り、BBQ 向けの「CQ」に余念がない。今や遅し!と待っていると、PMQ
の車がやってきた。既にウォーミングアップができている鉄板上で、黒毛和牛の霜降りや黒豚の豚トロなどの豪華食材が次々と焼かれていく。コンテストのオペレーションを交替しながら「マイクアンプの潤滑油」と一緒に幸せなひとときを楽しみ、3000-QSO
へ向けた結成式となった。
【拡張後の 7MHz 運用】
2009年3月に JA の 7MHz が 7200kHz
まで拡張になって、事実上初めての本格的なコンテスト・オペレーション。夕方のW向けはオンフレで楽になるのだろうけど、アジアやアフリカ、そしてヨーロッパ向けはどの辺で
QRV するのがリーズナブルなのだろうか? 土曜の午後は早くから聞こえる Zone 4 のWや南米と 7100kHz より上のオンフレで QSO。陽が傾き
7MHz でのランニングタイムになると、General クラスも QRV できる 7175kHz より上で CQ を出すという鉄則どおり 7190kHz
で CQ を出し、北米・南米のパイルを浴びる。2100 を過ぎる頃からU, OH, YL, HA, SP などの東欧・北欧や VK, ZL, DU,
ZS などが同じ周波数で呼んでくる。どうやらヨーロッパの多くの国々では 7200kHz まで QRV できるようである。一方、アジア方面の HS や
XU などは 7064kHz で CQ を出している時に呼んできた。クラスターの Database Search で調べると、7100kHz より上では
QRV できないようである。
オペレーターも半減した日曜の夜は、セオリーどおり東向けに 7150kHz 付近でランニング、アンテナを南に振ると VK, ZL, YB, DU,
VR2 など、落としてはいけないカントリーが次々と呼んでくる。最近の VK は「4文字サフィックス~例:VK2FDMX
など」の局が呼んでくるので、思いこみは禁物!
日付が替わる頃にビームを西に振ってヨーロッパ向けに電波を出すが、バンド中にモヤがかかったようなノイズにより思うように QSO が伸びない。7100kHz
の下に行くと、新手の OTH レーダーなのかキリキリというレベルの高いノイズがバンド中に蔓延していて使い物にならず、この夜の 7MHz
は局数を積むことができなかった。
今回の運用で判ったことは、ヨーロッパの多くのカントリーでは 7100kHz まで QRV できるが、アジア方面では、まだ 7100kHz より上で
QRV できないカントリー(HS, XU など)も散見されることから、クラスターの Database Search
などにより日頃から各カントリーのバンドプラン(特に 7100kHz よりも上で QRV
できないカントリー)をチェックしておく必要があるということであった。
【ダントツ楽しめた 3.8MHz】
今回の 80m は楽しかった! 朝の日の出の時間、日・月の2日とも殆ど自分 (DEA)
がやったので、他の皆さんには悪かったのだが、いい感じで呼ばれた。特に月曜の朝は G, F, A6 などのニューマルチをはじめ、EW や Zone 17
の中央アジアのカントリーが、どっかのゴキブリ捕獲器のCMじゃないけどゾロゾロ呼んできて、小一時間の間に局数で40程度、マルチも
10近くが増加した。夜中に呼べど叫べどカスリもしない常連局が次々と呼んでくる、このカ・イ・カ・ン!
JA の 75/80m
のバンドは「歯抜け割当」になっているが、バンドが広くなり、コンテスト常連人口も減っている(大学常連クラブ局が居ない!)ので、かつて(3793~3802kHz
だけの割当だった頃)のような「芋洗い」状態ではなく、CQ を出すスペースは十分。ヨーロッパは一般的に 3800kHz より上では QRV
できないので、3804kHz あたりで CQ 出して最初は 3785kHz を、その後は 3777kHz を指定してスプリットで運用した。今回初参加の
OPP が「3777kHz はパチンコ好きのスポットか?」とコメントしていたが、この周波数は JA の割当(~3770kHz と
3791kHz~)から程良く離れており QRM も無く静かだったので、弱い信号でも受信できた。後でクラスターを見ると、ヨーロッパの局は 3650kHz
付近の比較的低い周波数に QRV しているケースが多い模様。恐らく国によって、あるいはライセンスのクラスによっては高い周波数には QRV
できないところもあると推定されるので、次回は 3650kHz 当たりを指定する QSX もやってみたい。ちなみに、SP(ポーランド)の 80m
常連局(だと思う)は、JA の日の出時刻に併せて 3804kHz あたりを指定した JA 向けのスプリット運用で、快調に JA をさばいていた。
今後は太陽活動の活発化により、朝の 14/21/28MHz が徐々に重要になるが、日の出時刻を夾んだ1時間は、是非とも 80m
に時間を割り当てるべきと実感したひとときであった。
【今回の総括】
今回は PEJ の任命により、アテにならないコンテスト・マネージャを拝命したが、オペレーターが最大7人も集まり、最近になく賑わったシャックだった。
今回は違った視点に基づき、DX SCAPE の DATABASE DEARCH から、JA 主要局のコンテスト期間中の SPOT を拾ってみた。
=== CQ WW SSB 2009 SPOT CHECK ===
STATION | TOTAL | 80 | 40 | 20 | 15 | 10 |
M/S | JH4UYB | 99 | 2 | 33 | 38 | 24 | 2 |
M/M (?) | JA3YBK | 153 | 15 | 56 | 29 | 43 | 10 |
JR5VHU | 150 | 17 | 31 | 44 | 40 | 18 |
JA7YRR | 93 | 21 | 23 | 37 | 11 | 1 |
M/2 | JA1YPA | 60 | 12 | 18 | 20 | 10 | 0 |
M/M エントリー(と思われる)JA3YBK, JR5VHU 及び JA7YRR の SPOT 数の 40%を上回る SPOT
であれば、まぁ「それなり」にやっていた+飛んでいたということ(M/M は5バンド 48 時間運用、M/2 は2バンド
48時間運用、2/5=40%)にすれば、
=== CQ WW SSB SPOT RATIO ===
BAND | YPA | SPOT max | RATIO | EVALUATION |
80 | 12 | 21 (YRR) | 57% | Excellent (ooo) |
40 | 18 | 56 (YBK) | 32% | Not enough as equipment (x) |
20 | 20 | 44 (VHU) | 45% | So so (+/-) |
15 | 10 | 43 (YBK) | 23% | Not much enough (xx) |
10 | 0 | 18 (VHU) | 0% | No word (xxx) |
TOTAL | 60 | 153 (YBK) | 39% | Not so enough (x) |
という結果になり、3.8MHz と 14MHz はそこそこだったものの、7MHz はもう一歩(恐らく日曜夜の運用不足)、21/28MHz
は積極性が不足していたことが表れており、運用した側の実感とほぼ一致している。
最終的には、3.8MHz の局数のみが目標を達成し、他のバンドは目標に届かなかったが、もう少しハイバント(14/21/28MHz) での QSO
とマルチが欲しかった。特に 28MHz はワッチの時間が短かったのかもしれないが、100-QSO はやるべきだったろう。
また、これは YPA
慢性の症状だが、それぞれのオペレーターがニューマルチを他のバンドに廻すテクニックを身につけ、実践すれば少なくとも+10マルチ程度の増加は期待できるだろう。ということで、次の
CQ WW CW 2009 でも頑張りましょう!